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そば切り 蔦屋
(そばきり つたや)
2002年12月創業
店主;蔦谷健介氏
評価 ★★
住所 大阪市中央区内久宝寺町2-7-14
Tel.

06-6764-7074

最寄り駅

地下鉄谷町線・長堀鶴見緑地線谷町六丁目駅、又は谷町線・中央線谷町四丁目駅

アクセス 谷町五交差点東入る最初の信号右折すぐ
谷町筋の一夲東の通り沿い
営業時間

11時半〜14時半、17時半〜21時
水、木曜休み

席数

16席(大テーブル10位+小テーブル6)

駐車場 無し
最終訪問

2004.12.05(初囘訪問2003.02.28)

蕎麦屋に於てナニが重要であるかと問われれば、それは勿論味と香り、そして喉越しに他ならないのだが、味以外の要素では私はやはり「空気感」だと答えるであろう。この「蕎麦遊楽」ではよく「雰囲氣」という言葉を使っているが、「雰囲氣」だと店よりも客によって変化する不確定因子までも含んでしまう。「空気感」というのはそれとは違い、店及び店主自体が醸し出す、客の如何にかかわらづ存在する言葉では表現しきれない「何か」なのだ。
蕎麦好き、の中でも「蕎麦屋好き」な方は、その「空気感」に惹かれる部分が大きいのではないだろうか。そんな人に是非、訪れて頂きたいのがここ「蔦屋」である。
蕎麦屋で「蔦屋」というと、かの「藪蕎麦」のルーツとなった文京区千駄木の「団子坂蔦屋」がすぐに思い出される。しかしこの「蔦屋」は「藪」系列とは関係無く、以前和食の料理人をしていて「凡愚」で修行された店主の苗字が「蔦谷」氏であることによる。

手作り感のただよう店内。


古い長屋風の建物を改裝した風情の店は道路に面した全面がガラス張りでどこから入っていいのかがよくわからない。でも見ていると、皆思い思いの所から入って來るので入れる面ならどこから入ってもいい樣である。
店内の造りがこれまた澁い。いかにも手づくり風の不揃いの木の椅子や、窓際の席には年季の入ったベンチ。梁がむき出しの天井に隙間の大きい板張りの床・・・等々かなりレトロな内裝は到底2002年の創業とは思えない独特の味をかもし出してをり、このセンスは店主の修業先でもある「凡愚」にも通じるものがある。
そして、この店の「空気感」を作る上での最大のアドヴアンテイヂはその立地条件であろう。車がやつとすれ違えるほどの狹い道を挾んだ銅座公園の借景が実に味わい深いのだ。
丁度店から見える所に植わっているのは桜であるから、春にはとても綺麗であろう・・・とは思うのだが、個人的に桜を見ながら蕎麦を啜るのは少々抵抗がある。私はやはり寒い季節、葉の落ちた枝の間から冬空を見上げつつ背中を丸めて、といった方に「らしさ」を感ぢてしまう。

向かいの銅座公園の借景がいい雰囲氣だ


さて、腰を落ち着けて先づは酒。種類はちょくちょく変わっているのだが、「秋鹿」だけは常にそのラインアツプの中に入つている。まあ同ぢ「秋鹿」でも主に燗酒用として置いてある特別純米以外は入れ替わりがあるので、その時々の味を樂しむがよかろう。

アテには先づ「豆皿三種」を頂こう。その時々で変わる3つの小皿メニウは毎囘、何が出て來るのかが樂しみで、ついつい頼んでしまう。一品料理として滿足するボリウムではないが、腹にもたれない程度の量で酒を飮ませる工夫が逆に嬉しい。

日によつて内容が変わる豆皿三種。何が出て來るかはお樂しみだ
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そして「鴨椀(冩眞下左)」という見慣れないメニウ。これは言ってしまえば「鴨汁そば」の蕎麦が無いだけのもの、所謂「ヌキ」のことだ。正確を期すると「ヌキ」とは種物の熱ひ蕎麦、つまり「鴨なんばん」や「天ぷらそば」から蕎麦を拔いたもののことを指すので若干ニユアンスが異なるのだが、此の店の場合は熱ひ蕎麦というものが品書きに無いのでこれを「鴨拔き」と称しても良かった樣に思われる。それをわざわざ「鴨椀」という名前にしたのは、予想通り関西圈では「ヌキ」の概念が無いのでお客さんにわかりやすくする爲、とのことであった。
話は横道にそれるが最近、「ヌキ」を堂々と品書きに載せる店をちょくちょく見かけるのだけれども、これは大変野暮なことだと思う。「ヌキ」なんてものは酒を飮む客が品書きに無くとも當然の如く注文し、お店の方も當然の如く作って出す、というのが粹ってえもんじゃあなかろうか?まあもっとも、そこそこ名のある手打ち蕎麦屋で「鴨拔き」を頼んでも給仕の姉ちゃんが「鴨南蛮から鴨を抜くんですか?」と、とんちんかんなことを眞顏で聞いて來る樣な蕎麦文化の淺い関西圈では品書きに書いてくれてある方が安心は出來るのだが。
と、いう訳で、件の「鴨椀」。口腔粘膜をぎゅっ!と收縮させる樣な味わいの後、じんわり効いてくるダシの濃厚な味わいは鴨汁の王道。酒を飮む飮まないに関わらず、一度お試し頂きたい。

じんわりと美味い鴨椀500円
熱々の土鍋で供さるるそばがき800円
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蕎麦屋の定番「だしまき」には辛味大根が添えられ、ダシの香りが強く感ぢられる。初訪時に試したのだが少々かたく燒き上がりすぎてをり、その上頼んだニ人前の味の濃さや焼き具合がまちまち。これは元和食料理人にしては出來が惡い。これからもまだまだ精進が必要であろう。
手で千切って入れたた樣な「そばがき」はぐらぐら煮立たせた土鍋で供さるる。香りこそやや弱目ではあったが、つるりとした食感で舌触り良く、まあまあの出來である。
出來が良かったのは「おつけもの」。その時々で内容は変わるが、山芋のぬか漬けの絶妙な漬かり具合が忘れられない。
ただ御注意頂きたいのは「鴨椀」以外がすべて夜の品書きとなつていることだ。明るい窓際の席で眞つ昼間から飮む酒の背徳感を樂しむのに、いくら出來がいいとはいえ「鴨椀」だけでは少々寂しいものがある。もっとも、私が昼間に訪れた際には「そばがき」「だしまき」以外は作って頂けたのだが・・・

左より手挽きそば900円、もりそば800円、田舎そば800円。
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「蔦屋」の蕎麦の種類は「手挽きそば(冩眞上左)」「もりそば(冩眞上中)」「田舎そば(冩眞上右)」の三種類、此は「凡愚」と同ぢ構成である。
限定15食の「手挽き」や野趣あふれる「田舎」に心動くかも知れないが、もし初めての訪問であらば、先づはやはり基夲の「もり」から試すがよかろう。やや短めで喉越しは今ひとつなものの、香りはまあまあ許容範囲、この三種類の中では一番バランスが良い。
「田舎」は太打ちなのにごわごわ、ぼそぼそしていないのは立派だ。私が今迄に食した「田舎」の中ではなかなかのレヴエルに位置するのだが、まだ少々のかたさが残っているのでそのあたりを改善してゆけば良いであろう。また、シーズンに訪れたのに期待したほどの香りが立つていなかかつたので、その点も工夫頂ければ幸いである。
「手挽き」も香りに関して言えば今ひとつ立っていなかったが喉越しはなかなか良く、まあまあの合格点がつけられる。ただ師匠の「凡愚」で2001年の2月に食べた「手挽き」の鮮烈さと比較するとやはり劣っていると言わざるを得ない。もっともその「凡愚」の「手挽き」でも香りが立たぬこともあったので、その時々で多少のブレはあるのかも知れないが。
ツユは辛さこそまあまああり、よくこなれてはいるもののかえし、ダシともに弱く力不足。・・・とは言っても関西圈ではまだまともな部類に入る方ではある。

全体の印象として、一品一品の出來はそこそこまとまってはいるのだが「まあまあ」「惡くない」の域を出ず、この店ならでは、のキラリと光るものが感ぢられない。かように味に関してのみ言えばまだまだ発展途上、といったところだが、店全体の持つ「空気感」はなかなかのものである。今後のより一層の努力によりこの「空気感」に見合う味を供することが出來る樣になったとき、「蔦屋」は関西が誇れる蕎麦屋となることであろう。

主なメニュー:手挽きそば900円、もりそば800円、田舎そば800円、おろしそば900円、鴨汁そば1200円、鴨椀500円、そばがき1000円、だしまき600円、板わさ500円、おつけもの600円、豆皿三種500円、鯖寿司二貫300円
酒:秋鹿・特別純米(大阪)600円、天明・無濾過本生純米(福島)700円、東北泉・特別純米(山形)800円 等

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