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自家製粉石臼挽き手打蕎麦
「土山人」(どさんじん)
マンシヨンの1Fにある店。「ニユーウエイブ」系の店構えは関西圈では初めてであった。
評価 ★★
住所 芦屋市川西町7-3
芦屋川ビューハイツ112
Tel.

0797-35-8100

最寄り駅

阪神芦屋駅徒歩5分

アクセス R2芦屋川より1夲西、前田町交差点を南下、国道43号線と国道2号線の間
営業時間

11時半〜14時半、17時半〜21時半
(21時L.O.・売切閉店) 月休

席数

席数26席(大テーブル16、中テーブル6、小テーブル4)

駐車場 2台
最終訪問

2001.5.12(初回訪問1999年)

1998年、芦屋に登場してから絶大なる人気を誇り、休日はおろか平日の昼間でも店の前には行列が出來る。
それまで関西圈には殆ど無かった落ち着いた内裝で、酒も飮めて蕎麦を食べさせる店をこの芦屋という土地に開いたのは店主の慧眼といえよう。このあたりは少々値段が高くともいいものを出す店が容認される地域なのだ。

品書きを見て先づ気付くのは、蕎麦以外のメニューがかなり多いことだ。そこいら邊の小さな酒房顏負けの品揃えで、また酒が進みそうなものばかり(^-,^)、また酒も一貫した主義主張こそないものの、万人にうける樣になかなか考えられたラインアツプである。
先づはその酒といこう。酒についてくる蕎麦味噌はやや辛さの強いねっとりしたタイプのもの。同時に「焼味噌」も注文したがこちらは逆に少し辛さを抑えた関西風で、肴にするには少々味が足りなかった。

片口、ぐい呑み等の趣味も良い。

掻き揚げ」も油切れが惡くサクサク感に欠けたが、アテとして美味かったのは「穴子の煮こごり」。綺麗に切り揃えられたそれは口の中でとろりととけて、酒の味を引き立てる。
粗挽きの「蕎麦掻き」は空気含有量の少ないざらり、ねっとりしたタイプ。私が試した時は季節的なものか香りが立たなかった。そして季節感に関係なくユズが載せられていたが、そのユズの香りに蕎麦の香りが負けてしまっていたのが殘念。少なくとも蕎麦の香りが落ちる季節にはこのユズはよした方がよかろう。

蕎麦は「細挽せいろ(冩眞下左)」、「粗挽田舎(冩眞下右)」ともにまあまあ。さほど香り立つ訳でも、特別喉越しがいい訳でもないが、関西圈ではそこそこの位置づけになるか。しかし、その蕎麦を貶めているのがツユの不出來である。甘ったるくてコクがなく、「かえし」が全く出來ていない上にあと一番気になったのが舌に残る化学調味料系の後味だ。それなりにこだわったお店なのだからまさか味の素みたいなものは使用していないだろうとは思うので、もしかすると使つてる味醂が惡いのでは?と想像しているのだが、如何なものだろうか。

「細挽せいろ」(左)と「粗挽田舎」(右)。
(おのおの冩眞をクリツクすると大きく表示されます)

あとこの店の問題点は接客であろう。私が店を評価する基準は總合評価とはいえど味が殆ど全てであり、居心地や店員の態度は採点の対象外なのだが(阿佐ヶ谷時代の「慈久庵」に☆☆☆☆☆をつけている、と言えばわかる人にはわかるだろう)、たとえ空いている時であろうと有無を言わせづ着座位置を決めつけられる、驕り高ぶつた有名店などによく見られる態度で接されると、折角の蕎麦への期待も醒めてしまう。
確かに、夲場東京でもそのようなデパートの大食堂的客あしらいの店はある。しかし、それは何十人も入ることの出来る大店で見られる光景で、キヤパが20人以下の小回りの効く店では決して有り得ないことである。
開店時くらいは客が何処に座ろうといいではないか。後から來た客が座れなかったら席を移動してもらえばよいだけのことだ。それとも、芦屋の住民は店から、混雑痔に席をひとつずれることすら厭う人種だとでも思われているのだろうか?
でなければ何か、單に注文を取りに行く順番をわかりやすくする爲なのだろうか?しかし、もしこの程度の人数の店で、端から詰めていかなければ座った順番すら覚えられないのなら、それはそれでマネージメントに大いに問題がある証拠であろう。

“いま一つハードとソフトが唱和していない。その間(あわい)で客は少々とまどう。”
「新そば読本」(平凡社刊)で宮下裕史氏はいみじくもこう語った。
“店の土台を作るべき創世期にあまりにも多くの客が参集しすぎたのかもしれない。”とも。

まさにその通り、である。蕎麦屋を紹介する夲に於ての言葉であるから婉曲的ではあるが、私が目にした氏の文章の中でもかなり嚴しい部類に入る。もしかすると彼も私が訪れた時と同じ樣な客あしらいを受けたのでは?と推測するのは下衆の勘ぐりだろうか。

蕎麦の方向性を試行錯誤しつつ腕を磨いてゆくべき開店当時に、あまりにも蕎麦を喰い馴れていない客層が、しかも多數ついてしまった亊はこの店にとって幸運でもあり、またそれはある意味不幸でもあった。
まあまあのレヴエルのものを提供しただけで客が憙んだ故に、確かに商売としては軌道に乘った。しかし、これ位のものでいいや、と思ってしまった瞬間、進歩は止まり本当に美味い蕎麦を供する店としての未来が閉ざされてしまったのではないだろうか。

蕎麦の実力を磨かずに、コンセプトと見せかけの雰囲気で集客出來る時代は終わった…と言いたいところだが、まだまだ関西圈ではそういう商売が通用してしまうのはたいへん殘念なことである。

店主・渡邊榮次氏の経営者としてのセンスは認める。2001年「酒庵 風」、2002年「馳走 侘助」と姉妹店を次々オープン、そして2003年4月、「麺処 草庵」というラーメン屋まで開いたりして、その勢いは止まるところを知らない。確かにそういう蕎麦屋があってもいいのかも知れないが、蕎麦打ちとしての力量に関してはまだまだ修行の余地が多分にある。

この手の蕎麦屋の先駆者としての利益はもう十二分にあげているはずだ。これからはその一部でも、居心地の好い空間と夲当に美味い蕎麦を作ることで還元して頂けることを切に願ってやまない。
(2001年記亊・2003年改編)

主なメニュー:細挽せいろ850円、粗挽田舎蕎麦850円、辛味大根蕎麦1200円、鴨汁蕎麦1400円、そばがき1000円、焼味噌400円、だし卷玉子800円、かき揚げ天ぷら800円、穴子の煮こごり800円、れんこんまんじゅう(そば米あんかけ)600円、いかの沖漬500円他
酒:秋鹿槽口直汲750円、富久錦夢濾あらばしり800円、鄙願(3合瓶)3500円、真澄あらばしり生原酒1000円、菊姫山廃生原酒1000円、ヱビスビール600円他
(※價格はいずれも最終訪問時のもの)

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